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[MOM4140]旭川実MF樫山一生(3年)_守備奔走のゲームメーカー、黒子に徹して無失点に貢献

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旭川実高の10番を背負うMF樫山一生

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.9 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ2回戦 旭川実高 0-0(PK5-4)京都U-18 バルコム]

 本来のプレースタイルには、程遠かった。旭川実高(北海道)の10番を背負うMF樫山一生(3年)は、パスワークの中心となるゲームメーカーだ。しかし、最後の公式戦となったプレミアリーグプレーオフでは、センターバックではないかというほど自陣の深い位置で守備に奔走。押し込まれて耐える展開の中で、チームを支え続けた。

 相手はトップ昇格内定2人を擁する京都U-18。立ち上がりからボールを支配され、守備の時間が長く続くゲームだった。旭川実は、富居徹雄監督が「回収にフォーカスしていた」と話したとおり、自陣からロングボールを前線に送った際のセカンドボールの回収に重点を置いていた。押し込まれることを想定し、セカンドボールを奪うことで相手の波状攻撃を食い止めつつ、反撃を狙う形だ。

 肝になったのが、樫山と板垣侃寿(3年)のダブルボランチ。ロングパスが出ると同時に押し上げ、ツートップのサポートに走った。それでも押し返されることが多いゲームで、守備も難しかった。

 京都U-18は中盤のセンターに位置する3人がバランスを変えながら攻めた。MF安藤友敬(2年)はシャドーの位置から前線に上がる。MF松本隼和(3年)もツーシャドーの一角だが、こちらは下がってパスワークの起点にもなる。前後に動く相手に合わせて、守備も対応。樫山は最終ラインに吸収されながらも相手に食らいつき、延長後半にはゴール前でシュートブロックに滑り込むなど、自陣ゴール前で体を張る場面もあった。

 試合は延長戦でもゴールが生まれず、PK戦に突入。5-4で競り勝った旭川実が11年ぶりのプレミアリーグ復帰を決めた。PK戦で2番手のキッカーを務めた樫山は「自分の得意なプレーはパスですけど、チームが勝つためには守備が必要だったので、それに徹して頑張りました」と苦しかったゲームを振り返った。ワールドカップで日本がドイツやスペインを相手に粘り強く戦い、チャンスを生かしたゲームは刺激になっていたという。

 富居監督は「昨年を経験しているのは、渡辺健斗、樫山、安保。渡辺が受験でいなくて、その分、頑張ってくれた。樫山には最後、きちっとやってもらわないと、と思っていた」と樫山に期待と信頼を抱いていたことを明かした。

 エース格のアタッカーである渡辺が不在の中、押し返せずに守備が続くことは、イメージできていたのだろう。樫山は「渡辺は(攻撃面で)一発を持っている。最初は、いなくて大丈夫か、と思ったけど、やっぱり勝つという気持ちが自分たちにあって、それが出た」とチーム一体で耐え抜いた達成感を表現した。

 旭川実は、夏のインターハイに北海道の第1代表として出場。全国出場枠が1つとなる冬の高校選手権でも道内の最有力候補と見られていた。しかし、3回戦で北海高にPK戦で敗退。3年生は、失意の敗戦からこの試合のために立て直しを図った。

「選手権で負けて、最初はモチベーションが上がらない選手もいた。でも、自分は絶対に勝ってやろうという気持ちがあった。みんなに声をかけて、やって来ました。(終盤は)みんな、足をつっていたが、声をかけて、勝つ気持ちを見せられたと思う」と振り返った樫山を中心に、最後の決戦にチームがまとまって挑めたことは、今後の財産となる。

 樫山は卒業後、大学に進学予定。サッカーを続け、プロを目指す。「勝って、こんなに嬉しい試合は、今までになかった。こういう経験を生かして大学サッカーでも活躍できるように頑張りたい」と夢に続く困難を乗り越えていく姿勢を示した。高校年代最高峰のプレミアリーグ昇格を置き土産に、新たなカテゴリーに挑んでいく。

(取材・文 平野貴也)
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