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[新人戦]「本当の技術」も発揮。伝統校・遠野が堂々の戦いでV候補・尚志撃破!

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後半18分、遠野高はFW池口遥葵が決勝ゴール

[1.29 東北高校新人選手権準々決勝 尚志高 1-2 遠野高 Jヴィレッジ]

 伝統校の遠野が、真っ向勝負でV候補撃破――。第22回東北高校新人サッカー選手権大会(男子)は29日、準々決勝を行った。遠野高(岩手2)が前回大会優勝の尚志高(福島3)に2-1で勝利。遠野は30日の準決勝で学法石川高(福島2)と戦う

 いずれも前評判の高かった仙台育英高(宮城1)、尚志を連破。全国高校選手権準優勝や国体準優勝の歴史を持つ公立校・遠野が、快進撃を見せている。我慢強く戦って1-0で勝った仙台育英戦から、この日は「持っているものを出していこうと。中盤の選手がボールに触れる回数を増やしていこうと」(佐藤邦祥監督)と前半から真っ向勝負に出て、堂々の戦いで白星を収めた。

 尚志は2023年、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグに昇格。エースFW網代陽勇(2年、U-17日本高校選抜候補)、中盤の要であるMF神田拓人(2年、U-17日本高校選抜候補)はケガで登録を外れていたものの、攻守にタレントを擁し、連覇を狙ってきていた。

 だが、遠野はCB畠山哉人主将(2年)が「個人のスキルが高くなので団結力とか、頑張る力とか、精神面では初っ端から勝っていたんじゃないかと思います」と振り返ったように、前向きな姿勢で優勝候補に挑戦。序盤から押し込まれたものの、距離感を意識した守備と奪ったボールを丁寧に繋ぐ部分でも渡り合って見せる。

 尚志は0-0の後半開始からJクラブ注目の快足MF安齋悠人(2年、U-17日本高校選抜候補)とFW笹生悠太(2年)を同時投入。ゴールをこじ開けに行く。だが、遠野は後半5分、CKのクリアをMF菊池遥大(2年)が折り返し、最後はFW池口遥葵(2年)が左足でゴールへ蹴り込む。

 先制された尚志は9分にU-17日本高校選抜候補CB市川和弥(2年)を投入する。直後の10分、MF出来伯琉(2年)のスルーパスで安斎が一気に抜け出し、GKもかわして同点ゴール。個の力で試合を振り出しに戻した。

 だが、遠野は怯まない。佐藤監督が「彼が落ち着きどころになってくれますし、時間を作ってくれる」と評し、尚志の仲村浩二監督も「相手の10番が相当レベルの高い選手だなと思いました」と称賛していたMF昆野翔太(2年)が軸となって攻め返す。

 公立校の遠野は全国上位の強豪校に比べると体格面で引けを取る部分がある。だからこそ、妥協することなく技術面を強化。佐藤監督は「疲れてきたところでブレてしまったら本当の技術じゃないんだから、いかなる状況でも相手のプレッシャーを感じないくらい、疲れていても意図するようなコントロールやパスができるくらいという話をしていました」と説明する。

 その遠野はミスもあったが、後半の勝負どころで指揮官が「(及第点?)それ以上です」と驚くような「本当の技術」を発揮。MF馬場大瀬(1年)の1タッチのスルーパスやMF高橋優成の縦突破なども交えて攻めると18分、ショートカウンターから右中間を持ち上がった池口が思い切り良く右足を強振。素晴らしい弾道の一撃はGKの手を弾いてゴールへ吸い込まれた。

 再び追う展開となった尚志は安斎の3人抜きドリブルや、U-17日本高校選抜候補左SB白石蓮(2年)の右CKを市川が頭で合わせるシーンなどがあった。だが、遠野は畠山中心に集中力の高い守備。苦しい時間帯でもセカンドボールへの反応や運動量の部分で尚志を上回って見せる。

 また、自陣でボールを持った昆野が味方を使って相手のプレスを攻略するなど、安易には相手に連続攻撃を許さなかった。尚志は諦めずに攻めてゴール前のシーンを作っていたものの、2点目を奪うことができずに試合終了。佐藤監督も「去年の選手権から新人戦もゲームの流れとか押し返す力がなかなか出せなかったけれど、成長してくれた。(選手たちの)自信になったと思います」と讃えた遠野が、7年ぶりのベスト4進出を決めた。

(取材・文 吉田太郎)

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