beacon

[MOM4253]名古屋U-18MF野田愛斗(3年)_取り組むのは「自分が今やるべきこと」。愛と勇気のプレーメイカーが携える主力の自覚

このエントリーをはてなブックマークに追加

中盤で戦う姿勢を打ち出した名古屋グランパスU-18MF野田愛斗(3年=名古屋グランパスU-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.16 高円宮杯プレミアリーグWEST第3節 磐田U-18 0-2 名古屋U-18 磐田スポーツ交流の里ゆめりあ球技場]

 いつだって自分が先頭に立ってチームを引っ張ろうと考えている。ただ、この日の試合はとにかくその想いが強かった。絶対に負けたくない。アイツらがいなかったからとは、絶対に言わせたくない。

「長田と貴田と鈴木がいない中で、今日は『あの3人がいないから負けたというのは嫌だ』というのは試合前のミーティングでも出ていましたし、その中で耐えるところはしっかり耐えて、決め切るところはしっかり決めて勝てたというのは、本当に自信になったと思います」。

 絶対的な主力不在の一戦を逞しく勝ち切った、名古屋グランパスU-18(愛知)の中心軸。MF野田愛斗(3年=名古屋グランパスU-15出身)のみなぎる気合が、いつも以上にピッチの中で際立った。

「自分たちは最初からアグレッシブなサッカーをしようと言っている中で、前半は入りが悪くて、自分たちの甘さが出てしまいました」と野田も振り返ったように、ジュビロ磐田U-18との一戦は立ち上がりから劣勢の展開を強いられる。

 本来は左足からの展開力を持ち味とする野田も、ドイスボランチを組む相方のMF内田康介(3年)とともにまずは守備に専心。「去年は自分が相手のボールを奪い切る回数が少なかったんですけど、そこは自分でも課題だというのは感じていて、地道に、意識的に練習に取り組んできたので、それは徐々にですけど成果としては出てきているのかなと思います」と相手のボールにも臆さずトライしていく。

 前半のうちにセットプレーから先制し、以降は何とかリズムを取り戻すものの、後半はまた押し込まれる展開が続く。その中で後半からMF西森悠斗(2年)とのボランチコンビを組み直していた14番は、明確に自分の役目を把握していた。

「悠斗はボランチを試合でやるのが初めてで、わからないことも多かったと思うんですけど、康介も45分で交代した中で、そこは自分が責任を持ってやるしかないなということは思っていました」。より攻撃力に特徴のある西森悠斗をうまく泳がせながら、自身は全体のバランスを保ちつつ、水漏れしそうな場所を察知して、素早く塞いでいく。

 まだリーグが開幕する前の3月。野田は今季のイメージをこう語っていた。「去年は前に関わることが少なかったですけど、今年はより自分も得点に絡んでいって、その上でボランチとしてゲームを作ることだったり、ゲームの流れを読むことだったりをやっていきたいです」。もちろん攻撃したい気持ちは強いが、90分というシナリオの中で、やるべきことを過不足なくやり続ける。簡単そうで簡単ではないこの命題にも真摯に向き合っている様子は、この日のプレーからも伝わってくる。

 結果は終盤に1点を追加して、2-0でリーグ戦3連勝を達成。だが、「自分たちは1試合1試合成長するということを第一の目標としてやっていて、手応えはあるんですけど、まだまだ自分たちの可能性を信じてやっているので、これからどんどん伸びていけるんじゃないかなと思います」と野田は既に視線を先へと向けていた。

 開幕から野田を3戦続けてスタメンで送り出した古賀聡監督は、それでも「開幕からの2試合でも彼は自分にまったく納得していなくて、今日も『3人がいない中でも変わることはない。自分がやるだけだ』ということは決意して言ってくれていたので、たぶん彼にとっては不完全燃焼だと思いますし、まだまだ出しきれていないかなと。もっともっとやれる選手ですし、彼が攻守において中心になってゲームを作っていくことを期待したいと思います」と厳しい見方を口に。その口調に滲む大きな期待には、本人もとっくに気付いている。

 この日の試合を欠場したFW貴田遼河(3年)、MF鈴木陽人(3年)、DF長田涼平(3年)を筆頭に、周囲のチームメイトが次々とトップチームに2種登録されていく中で、複雑な心境もないはずはない。だが、ベクトルを向けるべき方向も、十分に理解している。「もちろん悔しい想いも、少しの焦りもあるんですけど、自分が今やるべきことは練習で自分の能力を高め続けることで、他の人のことを気にしていても仕方ないので、自分ができることに集中して取り組んでいます」。地道に、一歩ずつ、成長していった先に望むステージが待っていると信じて、日々のトレーニングを重ねていく。

 DF大田湊真(3年)とDF佐藤俊哉(3年)を経て、この日の“3人目”として最後に左腕へ巻いたキャプテンマーク。その感想を問うと、「今日は自分がチームを引っ張ろうと思っていたので、そういう意味では自信になりましたし、キャプテンマーク、ちょっと気持ち良かったです」と満面の笑み。高校生らしい素顔が垣間見えた。

 今年の名古屋U-18は間違いなく強い。その中でも中盤で効果的に振る舞えるこの男の存在感は、きっとまだまだ増していく。愛と勇気のプレーメイカー。野田のさらなる成長は、チームのさらなる結果に、間違いなく直結していくはずだ。



(取材・文 土屋雅史) 
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2023特集

TOP