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埼玉平成が初の埼玉決勝と関東大会へ!攻撃スタイルと我慢強さ、「勝ちたい」の思いで歴史を変える

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埼玉平成高が初の県決勝進出と関東大会初出場を決めた

[4.26 関東高校大会埼玉県予選準決勝 成徳深谷高 0-1 埼玉平成高 駒場]

 令和5年度 関東高等学校サッカー大会 埼玉県予選は26日に準決勝を行い、埼玉平成高が初の関東大会進出を決めた。埼玉平成は、18年以来の関東大会予選突破を目指した成徳深谷高に1-0で勝利。30日の決勝で初優勝をかけて武南高と対戦する。

 初の県準決勝、関東大会代表決定戦に臨んだ埼玉平成が堂々の勝利。初の県決勝進出と関東大会初出場の快挙だ。対戦した成徳深谷の為谷洋介監督は埼玉平成について、「試合巧者だった」と分析する。序盤、テクニカルな埼玉平成に立ち位置をズラされたり、背後を取られてしまい、なかなかボールの取り所が定まらなかった。

 加えて、「(自分たちの)入りが悪かったので、過剰に力が入りすぎたというか、良い緊張感じゃなかったですね」(為谷監督)という成徳深谷に対し、埼玉平成は「スタート入った時、『自分たち、結構できるな』とすごく感じました」(CB清水聖那主将、3年)。入り良く、自信を持ってスタートした埼玉平成が先制点を奪った。

 前半14分、清水のロングフィードに対し、成徳深谷の守備対応に乱れ。これで右サイドから斜めにランニングしたMF納谷嵩(3年)が抜け出す。その納谷が「(自分の武器は)スピードです。縦に抜けるスピードとか、相手の裏とか。その前に一回(チャンスが)あってゴール決められなかったので、次は決めようと思いました。最高でした」という一撃を決め、歓喜をもたらした。

 先制した埼玉平成は10番MF大久保夢牙(3年)やMF中島昂大(3年)、アンカーのMF三木響介(3年)をはじめ、各選手がテクニックを発揮。自陣の深い位置からでもドリブル、コンビネーションでボールを前進させ、右の俊足SB三国海(3年)が一気にスペースへ駆け上がる。

 成徳深谷は前半24分、右SB増田蹴人(2年)のクロスをファーのFW秋本光瑛(3年)が折り返し、最後は10番MF福島雪翔(2年)がヘディングシュート。前半36分に早くも切り札のMF福島叶都(3年)を投入した成徳深谷は秋本、FW平井心瑛(3年)の2トップへのロングボールで相手に圧力を掛けたほか、福島雪の鋭い仕掛けやセットプレーを交えて同点を目指した。

 成徳深谷の攻撃は迫力十分。だが、2回戦で同タイプの武蔵越生高との戦いでロングボールの対応などに慣れていた埼玉平成は動じない。清水が前への強さを発揮し、CB落合楓(2年)は競り合い、カバーリングの面でも利いていた。

 相手の圧力の前に三木が最終ラインに吸収されるような状態も続いたが、ゴール前での的確な守備対応で決定打を打たせない。加えて、三島伸也コーチ(不在の浦田尚希監督に代わって指揮)が「あまり動じない子なので。(彼を含めて)後ろの安定感で前は助かっていたのでは」と評したGK岡田大夢(2年)も雨中でミスすることなく守り続けるなど、守備陣の安定感が光っていた。

 埼玉平成はドリブル、1タッチのコンビネーションなど攻撃を特長とするチームだが、今年は守備意識の高さも兼ね備えたチームに。清水は「今年入ったくらいから攻撃をしていく上で取られることも多いので、そこで切り替えることや取られた後に取り返すことでもう一回攻撃できるというところに気づいたというか、攻撃を何回もするためには守備があるから攻撃できるよ、ということを三島コーチが教えてくれたので、それは意識していると思う」と説明する。

 自分たちが好きな攻撃をよりするため、勝つためにも守備が大事だということを理解した。今大会は攻撃から守備への切り替えの速さ、シュートを打たせないことなどを表現。その成果によって、初戦から3試合無失点で初の準決勝へ駒を進め、この日も雨中で堅守を発揮した。

 正智深谷は左SB鈴木嵐(3年)がロングスローやクロスなど苦しい時間帯でも奮闘。また、GK緑川徠雅(2年)の好セーブや、交代出場の右SB門脇来聖(3年)が相手の決定的なシュートをブロックするなど勝利への執念を見せた。だが、埼玉平成の「勝ちたい」という思いも特別だった。成徳深谷はロングボールを清水や三木に跳ね返され、40+1分に鈴木嵐の左クロスから平井の放ったヘッドも枠右へ。埼玉平成が4試合連続無失点で関東切符を勝ち取った。

 これまでの埼玉平成は勝利よりも、自分たちのスタイルを追求する面がやや強かったという。三島コーチは「選手はそうじゃないので。少しでも勝利に結びつけることも大事なんだなと。勝つことで日の目を浴びるじゃないですけれども、見てもらえる機会が増える。失点ゼロは今までの平成ではなかったこと。失点ゼロだったら勝てるんだと方向転換するつもりもないんですけれども、(勝つこと、最低限の守備をすることで)色々経験値を積めるように」と語る。“平成らしさ”も、選手の勝ちたいという強い思いも、そして今年の代の強みだという我慢強さも大事に。その力が融合し、県決勝、さらに関東の舞台に埼玉平成の名を初めて刻めることになった

 勝利の瞬間、黄色と橙のユニフォームは歓喜を爆発。清水は「勝ちたいという思いはあったんですけれども、厳しい試合になるかなと思っていたんですけれども、ここで勝てたのは凄く嬉しかったですし、ベスト4初で、関東も初ということで胸張っていけるのかなと思います。めっちゃ嬉しかったですね」と頬を緩めた。

 そして、関東大会では、「攻撃の部分では前線の選手たちは見て欲しいですし、関東大会では相手チームにも攻撃の強い選手がいると思うので、そういうところで守備のところは粘り強くいくことは見て欲しいと思います」。歴史を塗り替えたチームは4日後の県決勝も攻めて、無失点も継続し、初の埼玉制覇を果たして関東大会に臨む。

(取材・文 吉田太郎)

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