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声の後押し受けて劇的同点弾、PK戦勝利。全国8強の先輩から学んだ勝ち切る力、粘り強さも発揮の湘南工科大附が関東切符獲得:神奈川

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湘南工科大附高の選手たちがPK戦勝利を喜ぶ

[5.6 関東高校大会神奈川県予選準決勝 湘南工科大附高 3-3(PK6-5)東海大相模高 レモンS]

 令和5年度 第66回 関東高校サッカー大会 神奈川県2次予選準決勝が6日にレモンガススタジアム平塚で行われ、湘南工科大附高が関東大会出場を決めた。湘南工大附は準決勝で東海大相模高と対戦。3-3で突入したPK戦を6-5で制し、19年以来となる関東大会出場を果たした。湘南工科大附は決勝で日大藤沢高を下し、神奈川制覇を果たしている。

 湘南工大附の室井雅志監督は「大敗の匂いがプンプンしていた立ち上がりだった」と苦笑いする。切り替えの速さで遅れを取った湘南工大附は前半17分までに2点のビハインド。東海大相模は4分、左SB菅谷怜(3年)の縦パスで抜け出したFW櫛田和夢(3年)が先制ゴール。17分にもインターセプトしたMF関根裕真主将(3年)の絶妙なパスで櫛田が抜け出し、2点目のゴールを決めた。

 ボールを支配し、主導権を握っていたのはむしろ湘南工大附の方。的確にスペースを突いてボールを動かすMF笹沢巧馬(3年)やMF佐藤颯人(2年)、昨年から10番を背負うMF中山陽輝(3年)が中心となって前進し、コンビネーションで相手の守りを崩そうとする。だが、被シュート2本で2失点。2点を追う展開となった。

 ただし、個々が技術力の高さを示しながら攻める湘南工大附は36分、中山の右CKを攻守両面で奮闘していた左WB小林智輝主将(3年)が豪快に決めて1点差。一方の東海大相模も攻守に存在感を放つ関根のパスから櫛田が背後を狙い続けていた。40分には右CKをファーの菅谷が折り返し、最後は櫛田が左足でゴール。前半だけでハットトリックを達成した。

 湘南工大附にとっては得点直後の痛い失点。だが、室井監督は「もうちょいメンタル切れて戻ってくるかなと思ったら、『まだ行ける』という顔でそういう雰囲気でした」と振り返る。昨夏のインターハイで全国8強を経験しているチームは、ここから粘り強く戦い、40分間で2点を取り返した。

 前半に比べてボールが動かなくなったことは確か。成田へのロングボールが中心となり、それを東海大相模のCB根岸優汰(3年、21年U-16日本代表候補)や身体能力の高さを見せるCB杉本聖楽(2年)に跳ね返されていた。

 それでも、成田が幾度もスプリントを繰り返し、活動量の多い右WB栗林真秀(3年)や交代出場MF荻野寛太(2年)がゴール前へ。相手CB根岸の好守にチャンスを阻止されていたものの、33分、“カウンター返し”から1点を奪い返す。GK安田廉志朗(2年)のロングキックで抜け出した成田がGKとの1対1から右足でゴールを破った。

 東海大相模は後半開始から登場した小林正樹(2年)が相手にとって嫌な存在になっていたが、有馬信二監督は「(チーム全体が)もっとできる。もっとボールを動かせる」。櫛田へのロングボールが収まったり、得点に結びついていたこともあり、ボールを簡単に離してしまうシーンが目立ったことを残念がった。

 湘南工大附は終盤、3バックを支えたDF上野海里(3年)のポジションを上げて4バックへ移行し、中山のスルーパスや交代出場左SB國廣凜太郎(3年)のクロスなどからチャンス。諦めずに攻め続けると、40+3分にスーパーゴールで同点に追いついた。セットプレーでGK安田が競ると、その流れで右サイドからクロス。中央右寄りの位置にこぼれたボールを國廣が左足ダイレクトで叩く。アウトにかかったミドルシュートがゴール左隅に突き刺さり、3-3となった。

 この日はコロナ禍で実現しなかった声出し応援の中での戦い。室井監督は「きょう頑張れたのは本当に応援の力だと思います」と感謝していたが、スタンドからの声援を後押しに戦い続けた湘南工大附が土壇場で追いつき、スタンドの控え選手たちを興奮させた。

 3-3で突入した延長戦では、東海大相模も2年生10番MF沖本陸(2年)らがボールを動し、櫛田が決定的なヘッドを放つ。湘南工大附も交代出場FW山内蓮生(3年)や國廣の仕掛けからビッグチャンスを作ったものの、決めきれず、決着はPK戦に委ねられた。互いに5人目まで成功。そして6人目、湘南工大附の小林が決めたのに対し、東海大相模のシュートはクロスバーをヒット。この瞬間、湘南工大附が関東大会出場を決めた。

 湘南工大附は相模工大附時代に全国3位を経験。近年は代表決定戦で敗れることが多かったが、19年に8年ぶりとなる関東大会出場を果たすと、昨年のインターハイで87年以来となる全国切符を勝ち取った。そして、全国ベスト8。昨年の関東大会予選からインターハイ予選、選手権予選、そして今回の関東大会予選と4大会連続で代表決定戦を経験しているチームは再び大一番で勝つ経験をした。

 巧さ、判断力に加え、際の勝負で勝つチームに。中山は「勝ち切るチームって声出すチームとかかなと。繋ぐことは毎回できていたんですけれども、球際とかそういう守備のセットプレーの声がけとかを(インターハイへ出場した)去年のチームの人たちがやっていたので、今年もできているかなと思います」と説明する。

 また、室井監督は「きょうなんか、あそこで粘れたのは彼らの自信になる」と語った。この自信を今後の戦いに結びつける。中山は「去年、インハイベスト8まで行けたんですけれども、手応えとしても全然プレミア(リーグ勢)とかも勝てるかなと思ったので、今年も神奈川さえ抜けられれば全然優勝もあるかなと思います」。まずは昨年以上のチームになることを目指し、関東大会やインターハイ、選手権で勝ち上がる。

(取材・文 吉田太郎)

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