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「自分たちからできること」の成長を促す後半の修正力。C大阪U-18は興國を撃破して5試合ぶりの白星!

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セレッソ大阪U-18は2-0の快勝で5試合ぶりのリーグ戦勝利!

[6.25 高円宮杯プリンスリーグ関西1部第8節 C大阪U-18 2-0 興國高 セレッソ大阪舞洲ニッポンハムG]

 サッカーなんてうまく行かないことばっかりだ。むしろ、そうなった時に自分たちに何ができて、何を変えられるかを思考し、実行できるか否かが、選手としてもチームとしても、レベルが上がれば上がるほど、より求められていく。この日の桜の若武者たちは、その思考と変化をきっちりと勝利に結び付けたのだ。

「練習から『自分たちでやろう』ということも多くて、『自分たち自身で変えていかないと』という想いが大きいので、ハーフタイムでみんなで話し合ったことで、後半はちょっと良くなったんですけど、前半からもっとやりたかったなと思いますね。でも、今日勝ったのは大きいなと思います」(C大阪U-18・青谷壮真)。

 施した修正の効果で連敗脱出。25日、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023関西1部第8節でセレッソ大阪U-18(大阪)と興國高(大阪)が対戦し、前半にFW西川宙希(2年)のゴールで先制したC大阪U-18が、後半にMFエレハク有夢路(2年)も追加点を奪い、2-0で快勝。リーグ戦の連敗を4でストップし、2か月ぶりの白星を手に入れている。

「全然うまく行っていないのは、みんなもわかっていたと思います」とエレハクが話したように、前半のホームチームは攻撃のリズムを作れない。MF鈴木聡太(3年)が2列目で広範囲に動き、西川とFW首藤希(2年)も時にはサイドを入れ替えながらパスを引き出しにかかるも、なかなか前にボールが届かず、フィニッシュが遠い。

 それは興國も同様だった。DF竹村咲登(1年)とDF荒木慎悟(3年)のCBコンビと、中盤アンカー気味に位置するMF舟見圭志郎(3年)を起点にビルドアップしつつ、サイドバックのDF古瀬夢叶(3年)とウイングのMF宮原勇太(3年)が縦関係になった左サイドから時折攻め込むものの、やはりシュートには至らず。前半31分にはMF國武勇斗(3年)が左へ振り分け、古瀬のクロスに右サイドバックのDF西岡隼平(3年)が飛び込むも、わずかに届かない。

 静寂は唐突に切り裂かれる。41分。DF船見幸毅(2年)のインターセプトから、良い位置に入った鈴木が繋ぐと、西川は左足でフィニッシュ。ボールはゆっくりと、確実に、右スミのゴールネットへ転がり込む。「自分では『最悪0-0でもいいかな』と思っていたんですけど、宙希がメッチャ良いゴールを決めてくれたので、それは大きかったですね」(エレハク)。この試合のファーストシュートで先制したC大阪U-18が1点をリードして、最初の45分間は終了した。



「ハーフタイムに言ったのは、自分のところでボールを持つ時間を縮めるところですかね。プレーを正確にするところが僕らの速さなので、『無駄なタッチが1個2個多い』ということと、“受ける方の速さ”は話しました」とはC大阪U-18を率いる島岡健太監督。パスを出す方も、受けるほうも、どちらにも必要なのは“速さ”を意識することだと、指揮官は話す。

 後半3分はC大阪U-18。左サイドで前を向いたMF木實快斗(2年)が積極的にミドルを放ち、ここは興國GK松岡空(3年)のファインセーブに阻まれたものの好トライ。10分にも木實が左へ展開し、走った鈴木の折り返しに西川が打ち切ったシュートは枠の右へ外れるも、スムーズな連携から決定機まで。14分にはFW小野田亮汰(1年)が高い位置でボールを取り切り、木實はシュートまで持ち込めなかったが、「前半は全然前に行けていなくて、横だったり後ろが多かったんですけど、後半はどんどんテンポも上がってきて、前に行く回数が増えたのかなとは思いました」とはその木實。C大阪U-18の攻守に躍動感が灯っていく。

 16分に生まれたゴラッソ。「後半はアンカーのところの守備の意識をしていました」という木實がボールを奪い、首藤が仕掛けたドリブルがこぼれると、エレハクは左足一閃。軌道は鮮やかにゴールネットへ突き刺さる。「ファーに蹴ろうとは決めていたんですけど、良い具合に入ってくれた感じです。コースは完璧でしたね」と笑った15番は、あっという間にチームメイトの輪の中でもみくちゃに。2-0。点差が開く。

 リードを広げたC大阪U-18は、守備も好循環に回り出す。「相手が持った時の守備で、『プレスもタイミングを合わせて行こう』と話しました」とは青谷。最前線の小野田をスイッチに、連動したプレスで相手のビルドアップを制限。興國も28分には途中出場で攻撃を活性化させたMF河合健吾(3年)が右ポストを直撃するヘディングを繰り出したが、相手の堅陣は崩し切れない。

 青谷も「今日は2年生が1年生に強く言う場面もありましたし、1年生は1年生で声を掛け合っていたので、それは良かったなと思います」と口にしたように、ホームチームは右からDF刈田琉唯(1年)、船見、DF平山大河(1年)、DF伏見晄永(1年)と下級生で組まれた4バックも、最後まで声を出し合いながら安定感を維持。終盤は相手の攻撃の芽を早めに摘み取り、危険なシーンを回避し続ける。

「相手が提携校ということで、絶対に勝たないといけないというところで、みんなの『絶対に勝ってやる』という気持ちが自分にも伝わってきて、『自分もそれに乗らないと』と思って、気持ちもどんどん上がっていきました」(木實)。多くの“高校の同級生”がピッチで激突した特別な一戦は、C大阪U-18が5試合ぶりの勝利をもぎ取る結果となった。

 もちろん前半終了間際の先制ゴールが大きかったことは間違いないが、前半と後半のC大阪U-18はまるで別人かのように、その表情をハッキリとピッチ上で変えることになった。

 1試合を通して高いパフォーマンスを維持した木實は、「前半が全然ダメだったので、後半は『もっとギアを上げていくぞ』という話をして、コーチたちが変えてくれたというよりは、自分たちがピッチの中で変えられたことが良かったと思います」と言及しつつ、もう少し詳細を尋ねられると「相手の7番が中盤の後ろにポジションを取ったりしていたので、そこをどうするかとか、フォワードが落ちて行ったスペースをセンターバックが埋めるのか、自分が埋めるのかとか、守備はそういうことを確認して、攻撃では『もっとシュートを打とう』と話しました」と回答。エレハクも「快斗が落ちてくるボランチに対して行ってくれていましたし、快斗や前の選手がメッチャ頑張ってくれていたので、僕はスペースを埋める感じというか、その後に取りに行く感じでした」と話している。

 青谷も後半の変化に対して、「攻撃はボールを止めてからのテンポとか、速さとか、1人が受けた時のサポートの遅さがあったので、後半はそこを改善してボールを運びやすくなりましたね。守備面では相手が持った時に、全部行ってしまうとしんどくなるので、『タイミングを決めていこう』と話していて、それで良くなったと思います」ときっぱり。指揮官やコーチの助言も仰ぎながら、基本的には自分たちで考え、実行し、その上で勝ち点3を手にしたことが、彼らの確かな自信に繋がることは想像に難くない。

 さらに青谷はこんな話もしてくれている。「僕らは、なかなか“0”から“100”にできないんですよね。“80”からだったら“100”にはできるんですけど、何もないところから自分たちの流れに持って行くことができなくて、自分たちは本来できることが多いのに、今はできないことも多いので、そこは課題かなと思っています」。

 チームとチームメイトのポテンシャルを信じている守護神の言葉に、2023年のC大阪U-18の“のびしろ”が滲む。次は“70”から“100”へ。その次は、“60”から“100”へ。少しずつ『自分たちからできること』を増やしていった先には、連覇を狙うクラブユース選手権や、1年での復帰を懸けたプレミアリーグプレーオフでの躍動が待っているはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
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