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プレミア初スタメンで青森山田からゴール奪取!前橋育英DF立木堯斗が見据えるのはメインキャストへの道筋

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青森山田相手に先制点を奪った前橋育英高DF立木堯斗(2年=前橋FC出身)

[7.9 高円宮杯プレミアリーグEAST第11節 前橋育英高 1-2 青森山田高 前橋育英高校高崎G]

 ようやく巡ってきたスタメンのチャンス。試合に出ていない応援席のチームメイトからも、熱い想いを託されてきた。ここでやらない理由はない。とにかく自分にできることを、このピッチで、真摯に、全力で。

「今日はプレミアの初スタメンだったので、『今日結果を残さないとな』と思っていましたし、相手が青森山田ということで迫力も凄くて、競り合いも凄いのはわかっていたので、そこには絶対に負けないでゲームに入ろうと思っていました」。

 仲間の躍動を横目に悔しい想いを携えてきた、前橋育英高(群馬)のレフティサイドバック。DF立木堯斗(2年=前橋FC出身)はプレミアの舞台で首位の難敵相手に、確かな爪痕を残してみせた。

「水曜ぐらいに紅白戦があって、その時にスタメン側にいたので、『うまく行けばこのままスタメンかな』とは思いました。前の試合も、その前の試合もベンチ外だったんですけど、左サイドバックの(斉藤)希明さんが今週はコンディションの問題で外れていたので、スタメンを絶対獲ってやろうと思っていました」(立木)。

 シーズンの立ち上げとなった新人戦では、左サイドバックのスタメンで起用されていたが、プレミアリーグの開幕が近付くにつれ、少しずつ1つ先輩のDF斉藤希明(3年)との序列が変わっていく。

「新人戦では自分への期待もあったのかなと思うんですけど、プレー的に強く行けないところで、新人戦の後により希明さんとの差が出てきたのかなと。悔しい想いはありましたけど、ここで腐ってはいけないので、チャンスをずっと待ちつつ、それが来た時に力を発揮できるように頑張ろうと思っていました」。

 第6節でようやく途中出場を果たし、プレミアデビューは飾ったものの、スタメンを張り続ける斉藤の壁は高い。さらに、インターハイ予選による中断明けの初戦となった昌平高戦では斉藤が欠場したにもかかわらず、その代役に指名されたのは同じ2年生のDF林優眞(2年)。「優眞は本来は右サイドバックの選手で、自分は左をずっとやっているので、やっぱり“左で負ける”という悔しさは凄くありました」。中学時代からのチームメイトに先を越された立木の心中は、察して余りある。

 そんな流れの中、前半戦のラストゲームとなる第11節で、とうとう到来したスタメンのチャンス。しかも相手は首位を快走している青森山田。今まで蓄え続けてきた実力を、周囲に見せ付けるための舞台は整った。

「試合前にいろいろな同級生から『応援してるぞ』と言われたので、観客もいっぱいいましたけど、それが力になりました」。左サイドバックの位置からすぐ横のピッチサイドを見れば、声援を送ってくれる仲間の顔が並んでいる。試合が始まってしまうと、いつの間にか緊張は消えていた。

 前半17分。右CKの流れから、DF山田佳(2年)が鋭いクロスを送り込むと、ワンバウンドしたボールに6番が突っ込んでいく。「佳がボールを持った時に、持ち方的に『これはクロスが来るな』と思ったので、そこで抜け出してゴールを奪ってやろうと思って、中で待っていました。つま先の足の裏のあたりで触ったんだと思うんですけど、ちゃんとしたインパクトの感触はなかったので、もう『入れ』と。ただ、それだけを思っていました」。

 ハーフバウンドで何とか合わせたボールは、フワリとした軌道を描きながら、右のポストの内側を叩いて、ゴールネットへ吸い込まれる。「あまりゴールを決めるポジションでもないですし、久しぶりにゴールを決めたので、凄く嬉しかったです。高2になってからは公式戦の得点は初めてです」。気持ちの乗った立木の先制弾で、前橋育英がリードを奪う。



 ただ、ゲームは青森山田が首位の意地を見せ、後半にセットプレーとクロスから2点を奪い返して逆転。ホームチームも食い下がったが、結果は1-2でアウェイチームが勝ち点3を獲得。前橋育英にとっては、好ゲームこそ演じながらも、勝負強さに課題の残る90分間となった。

「やっぱり最後の最後の一瞬のところでやられて、疲れもあってチームもだんだん集中力が落ちてきていたかなと思います」と語った立木は、初めてフル出場したプレミアの強度を“疲労度”で実感したという。

「あの場の雰囲気とか緊張感もあって、試合が終わってから疲れがいつも以上にドッと来て、プレミアでの疲れは凄いなと思いました。後半の最初の方から足が攣り始めていましたし、そういう疲労感が来るのがいつもより全然早かった気がしますね。気合で何とか乗り切りました」。その体験もスタメンを勝ち獲ったからこそ。つまりは立木も、いよいよポジション争いのスタートラインに立ったのだ。

 青森山田戦を終えたリーグ戦は、ここから2か月近い中断に入るが、チームは全国連覇を狙うインターハイに向かう。「練習から身体を強くすることだったり、相手に強く当たるところもそうですし、監督やコーチに指摘されたところをしっかり自分の中で考えて、実践していくことが必要かなと思います」という立木も、もちろん真夏の北海道での躍進に高い意欲を携えている。

「まずはスタメンを奪えるようにしたいですし、試合に出た時にしっかりアシストやゴールを狙っていって、結果を出せる大会にしたいです。チームとしては去年優勝していることで、周りからはそういう立ち位置として見られると思うので、去年と同じように決勝まで行って、そこで勝ちたいなと思います」。

 遅れてきた男の逆襲宣言。自分のために、家族のために、そして想いを託してくれる仲間のために。ようやく溜めてきたエネルギーをピッチで解き放ってみせた立木は、ここからメインキャストへとのし上がっていく道筋を、はっきりと見据えている。



(取材・文 土屋雅史) 
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