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[MOM4435]桐生一MF乾真人(3年)_堅実なプレーが光る攻守のキーマンが今季初のフル出場で勝ち点獲得に貢献!

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中盤で攻守にファイトした桐生一高MF乾真人(3年=前橋FC出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.23 高円宮杯プリンスリーグ関東1部第13節 桐生一高 0-0 浦和ユース 伊勢崎市・あずまサッカー場]

 自分のことは、自分が一番よくわかっている。できることを、丁寧に、堅実に、完璧に。それを積み重ねていくことが、結局はチームの結果に繋がることだって、十分に理解しているから。

「自分はメッチャ上手い感じの選手ではないですし、1人で何とかできるプレースタイルでもないので、ボランチで捌いて、攻撃にも関わって、みんなと繋がって、セカンドも拾ってという、チームを支える役割を担えればと思っています」。

 桐生一高(群馬)の攻守を繋ぐ中盤のキーマン。MF乾真人(3年=前橋FC出身)の献身的なプレーが、チームに今シーズン初の無失点と貴重な勝ち点1をもたらした。

「普段の自分たちは前からプレスを掛けて、ミスを誘ってという感じなので、あのやり方は初めてやったんですけど、引いて守っても結構行けたなという感じはあります」という乾の言葉はチームの共通認識かもしれない。前半戦の対戦時には0-6という衝撃的なスコアで敗れた浦和レッズユースを向こうに回し、この試合は明確にブロックを後ろで作り、引っ掛けたボールをカウンターに繋げる狙いを徹底。実際にそれを決定機にまで結び付けるシーンも散見される。

 その中で中盤を逞しく引き締めたのが、7番を背負った乾だ。技術の高い選手が揃う相手に対し、機を見たプレッシャーでボールを奪い切るシーンを作ったかと思えば、攻撃面でもシンプルな配球でリズムを生んでいく。

 この日のドイスボランチの相方は、ここまでなかなか出場機会を得られていなかったMF谷口諒治(2年)だったが、「ビルドアップの時は1人はアンカーを作る感じなので、そこはアイツに任せていましたし、逆にアイツがボールを持った時に良い形で支えることは意識していました」とバランスを考えつつ、攻守両方の局面で存在感を発揮していく。

 終盤までその足は落ちない。「ずっとフル出場したかったですけど、体力がなくて、いつも『自分が交代した方がいいんだろうな』という感じはあったので、今日は涼しいのもあったんですけど、今季初めてフル出場できたことが良かったと思います」。全力で走り切った末に、チームも浦和ユース相手に0-0で引き分けて、勝ち点1を獲得。90分間をトータルで考えても、乾のパフォーマンスが勝敗に与えた影響は小さくなかったと間違いなく言えるだろう。

 体力面に不安を抱えているのには理由がある。2年生だった昨シーズンのプレミアでは7月以降にスタメンを確保し、高強度の中で経験を積んでいったが、11月下旬の市立船橋高戦で骨折に見舞われ、2か月近い戦線離脱を余儀なくされる。

 最高学年となる高校ラストイヤーが始動すると、プレシーズンからチームは好調をキープ。その状況に対して焦りを感じた乾はハイペースで復帰への準備を整えていったものの、今度は肉離れ。再びリハビリの日々へ逆戻りしてしまう。

「それまではずっとケガをしないような感じだったので、こんなに続くのは初めての経験で、メンタル的にも厳しかったですし、悔しかったですね」。またも2か月ほどの離脱を経て、5月にはリーグ戦に先発出場し始めたが、なかなか90分間を戦い切るまでには至らなかっただけに、ようやくこの日の試合でフル出場を味わったことが、今後への小さくない自信となったことは想像に難くない。

 加えて、任された立場も乾に責任感をより芽生えさせている。「去年は全然目立つ感じの存在ではなかったんですけど、今年は副キャプテンになったこともあって、『自分も声でチームメイトを引っ張っていきたい』とはずっと思ってきました」。自分のプレーだけにフォーカスすればいいわけではないと自覚し、グループ全体の雰囲気作りも意識してきた。

 だからこそ、残された高校生活で成し遂げたいことは、その視界にハッキリと捉えている。「もうリーグ戦はプレミアの昇格が難しくなってしまって、残留しかないので、そこは達成したいです。あと、自分は桐一の繋ぐサッカーを見て、『ここなら自分がやりたいサッカーができるな』と感じましたし、正直『(前橋)育英を倒したい』と思って入学してきたので、選手権でも準決勝で当たる育英に勝って、決勝も勝って、全国に行きたいと思います。今年はもう最後なので、絶対に育英を倒したいですね」。

 悔しい時間の方が多かった今シーズンのここまでは、あくまでも大きく羽ばたくための長い助走。3年間を仲間たちと最高の笑顔で締めくくる未来に向けて、的確で堅実なプレーでチームを支える役割を担う乾がここからフル稼働することは、目標達成への絶対条件だ。



(取材・文 土屋雅史)
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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