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日本人審判員がアジア杯に最多8人! さらなるプレゼンス拡大へ“初参加”荒木友輔主審「トレーニングだけでなく会議室でも積極的に」

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荒木友輔主審

 今月12日に開幕を迎えるアジアカップでは、日本から最多8人の国際審判員が派遣されている。女性として史上初参加の山下良美主審には現地でも大きな注目が集まっている一方、北中米ワールドカップに向けてアピールに燃える男性審判員にとっても大事な大会。『ゲキサカ』では10日、アジアサッカー連盟(AFC)が開いた審判トレーニングのメディア公開終了後、初参加となる荒木友輔主審に話を聞いた。

 日本からは今回、アジア杯初選出を果たした荒木・山下両主審のほか、2回目の参加となる飯田淳平木村博之両主審がカタール入り。さらに三原純、聳城巧、坊薗真琴、手代木直美4副審も選ばれ、全ての国で最多となる合計8人が大会開幕に向け、日々トレーニングを続けている。

 荒木主審は「アジア中、あるいは世界中から注目が集まる試合で、日本のレフェリーチームとしてしっかり結果を残したい」と意気込みをアピール。日本の審判員の多さが象徴するようにレベルの高さと層の厚さでは群を抜いている中、「私から見ても我々日本のレフェリーのパフォーマンスは高い。できれば難しい試合に当てられて、しっかりと難しいゲームをコントロールして良い結果を残せれば、日本サッカーの価値もより高められると思うので、その観点でも頑張りたいなと思います」と力を込めた。

 荒木主審は一昨年末、審判交流プログラムでイングランドに渡り、プレミアリーグ2のチェルシーU-21対トッテナムU-21などアンダーカテゴリのビッグマッチを経験。昨年春にはU-20ワールドカップの2試合で主審を務め、その後はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の西地区6試合で主審やVARを担当し、北中米W杯アジア2次予選など、数々の国際舞台に立ってきた。

 日本から遠く離れたACL西地区の担当では「サッカーは違いますし、選手のマネジメントも違う。向こうのプレッシャー、選手側の表現の仕方も変わってくる」と貴重な経験も。またJリーグのシーズンオフにはインドネシアリーグの笛を吹くなど担当試合が続いていたことで、「今大会に向けてはいい準備ができたし、いいイメージを持ってこの大会に臨めているのかなと思います」と好感触を持っているようだ。

 そんな荒木主審ら日本人審判員にとって、今大会は今後さらに国際的プレゼンスを高めていけるかを占う大事な大会になりそうだ。

 一昨年末のカタールW杯では日本から山下主審が女性で初めて選出された一方、有力視されていた佐藤隆治主審が落選。国ごとの人数バランスも含め、実力以外の要因も含めて涙をのむ形となった。他国同士で組んだ際のコミュニケーションスキル、国際的なプレゼンス不足などさまざまな弱点も挙げられるものの、ここから復権を見据えていくには、一つ一つの大会で影響力を増していきたいところだ。

 ピッチでプレーする日本代表は近年、選手個々が世界的舞台で実績を重ねてきたこともあり、国際的な評価をさらに高めつつある。それでもMF守田英正(スポルティング)は今大会に向けて「まずはアジア王者にならないといけない。その風格だったり、クオリティーだったり、プライドみたいなものを大会で見せつけることができれば、日本がもう一段階上、当の意味でアジアを引っ張っていける国になれるんじゃないかと思う」と述べ、さらなる高みを見据えていた。

 “風格”“プライド”といった定量化できない価値の重要性は、審判界にも当てはまりそうだ。荒木主審もそうした点を重々、受け止めている。

「やはり日本人の良さや、元々持っている几帳面さ、勤勉さは世界から評価されている部分だと思うんです。でもそれがマイナスなイメージにもなっているケースも出てきている。そういうところを覆すためにも普段のプラクティカルトレーニングだけでなく、会議室のミーティングの中でも積極的に発言をして、風格といいますか、存在感を上げていきたいなと思っています」(荒木主審)

 国際主審として活動するからには、目標は明確。荒木主審は「最終的にはW杯につなげていきたいと思いますし、U-20W杯、アジア杯を経てステップアップして、もっともっと上にいきたいなと思っています」と野心を見せる。もっともそのためには、派手なパフォーマンスで試合を彩るのではなく、地道に試合を運営するのが審判員という仕事だ。

「やはり大きなミスをしないで、ゲームに迷惑をかけないようにすることですよね。あとはVARが入ってくると、よりコミュニケーションを密に取らないといけないので、コミュニケーションミスによってトラブルが生まれないようにというのを心掛けていきたいです」(荒木主審)

 そういった振る舞いは荒木主審個人だけでなく、主審やVARと立場を入れ替えながらアジアを共に転戦してきた飯田主審、木村主審の他、三原副審、聳城副審ら日本人審判チーム全員で貫いていく構えだ。

「ACLからずっと一緒なので、家族よりご飯を一緒に食べているくらいです(笑)」。そう冗談めかした荒木主審は「いろいろなことを知っている仲なので気にせずできるかなと思います」と信頼感を強調。日本で見守るサッカーファンに向けて「日本からここに来ている全員が主審、VAR、AVARの実力があると思うので、誰が笛を吹いてもいい結果を残せると思います。日本人セットで組む機会が多いと思うので、その辺を楽しみにしてもらいたいです」と奮闘を誓っていた。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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