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川崎Fの追加点は「明白な」オンサイド? 福岡は判定修正で劇的決勝弾:J1第14節VARまとめ

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 J1リーグは12〜16日、第20・21節の前倒し分3試合と第14節の10試合を各地で行った。今季から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)による介入は3回。湘南ベルマーレのゴールがファウルにより取り消され、オフサイドとされていたアビスパ福岡川崎フロンターレの得点が認められた。

<事例1>5月15日 J1第14節 仙台0-1福岡@ユアスタ

 0-0で迎えた後半アディショナルタイム1分、福岡は中盤で獲得したFKをクイックでスタートすると、DF志知孝明がクロスボールを供給。これを仙台のDF吉野恭平がヘディングでクリアするも、MFフォギーニョの身体に当たったボールが跳ね返り、こぼれ球を拾った福岡FW渡大生が振り向きざまにゴールに蹴り込んだ。

 ところがここで副審はフラッグアップ。渡のシュートの前に福岡の選手にボールが当たったと判断し、オフサイドを取ったとみられる。その後、VARからの助言を受けた岡部拓人主審がプレーを止め、チェックのため試合が約3分半にわたって中断。VARオンリーレビューによって判定が覆され、福岡の決勝ゴールが認められた。

 なお、仙台の選手たちはすかさずFKの再開位置についても抗議を行っていたが、VARが助言できるのはプレーが再開してからゴールにつながるまでの範囲のみ。再開方法や再開位置に関するレビューはできないため、主審がプレー再開の手続きを直後に咎めていないのであれば、VAR介入によって再開前まで遡ることは認められない。したがって、今回のVAR運用は適切だったといえる。

主審:岡部拓人
担当副審:川崎秋仁
VAR:吉田哲朗
AVAR:東城穣

<事例2>5月15日 J1第14節 横浜FC2-0湘南@ニッパツ

 横浜FCが1-0でリードして迎えた前半31分、湘南はMF中村駿の右コーナーキックのこぼれ球を受けたMF町野修斗が右足で狙うと、このボールは相手DFに阻まれたが、ゴール前に詰めたFWタリクが再度シュート。横浜FCはGK市川暉記がなんとか阻むも、最後はMF岡本拓也が押し込んだ。

 ところがここでVARが介入し、横浜FCのキックオフが中断。約3分間にわたってチェックを待った後、松尾一主審がオンフィールドレビューを行った。問題となったのは岡本がシュートを打った際、GKの市川がすでにボールを足でコントロールしているにもかかわらず、足を蹴る形でゴールに押し込んだこと。映像でその場面を確認した松尾主審は岡本にファウルがあったとして、ゴールを取り消す判定を下した。

主審:松尾一
VAR:西村雄一
AVAR:上村篤史

<事例3>5月16日 J1第14節 川崎F 2-0 札幌@等々力

 川崎Fが1-0でリードして迎えた後半アディショナルタイム4分、川崎FはMFジョアン・シミッチのインターセプトからMF橘田健人がアウトサイドで前へとつなぎ、MF田中碧がスルーパスを配給。これに抜け出したFW小林悠が札幌GK菅野孝憲との1対1を制してゴールを決めた。

 副審はオフサイドのフラッグを上げたが、ここでVARが介入。約2分間にわたってチェックを行った結果、VARオンリーレビューによりゴールが認められた。公式中継で何度も流された映像では、最終ラインとなった札幌DF福森晃斗の足と小林の上半身(肩)の位置関係は一見して判断がつかないほど。それでも、最終的にはオフサイドからオンサイドに判定が覆った。

 通常オフサイドの判定に際しては、テクノロジーを使ってピッチに架空のラインを引くのが一般的。だが、各国リーグによって導入されるテクノロジーの違いから、ラインの引き方も大きく異なっている。

 Jリーグで導入されているのは2Dオフサイドラインテクノロジー。地面についている部位のみをもとに判定する仕組みだ。一方、イングランド・プレミアリーグなどで採用されているのは3Dオフサイドラインテクノロジー。空中にある部位からもピッチに向かって垂線を引くことができ、地面についていない部位の位置関係も厳格に特定できるという特徴がある。

 一見、厳格な判定が期待できる3Dオフサイドラインテクノロジーのほうが優れているような印象も受けるが、必ずしもそうとは限らない。JFAの審判委員会が開幕前のメディアブリーフィングで「2Dと3D、どちらがいいかは難しいものがある」と強調していたように、3Dテクノロジーを使用するプレミアリーグでは数センチ単位でも判定が覆るケースがたびたびあり、「カメラのフレーム速度による誤差ではないか」という批判も相次いでいる。

 一方、2Dオフサイドラインにおいては、まずは「空中の部位は厳格に判定できない」という前提に立つ必要がある。JFA審判委員会は「地面にラインが引けて、足がラインについていて、少しだけ出てしまったという場面では、何がフェアかということを考えたらオフサイドにせざるを得ないという状況も出てくる」と接地面の位置関係では厳格な判定に期待しつつも、微妙な判定については「審判のジャッジをサポートするためのラインになる」(=つまり際どい場合は元の判定を支持)と説明。「明らかな間違いを正すことになる」という位置づけを示していた。

 では、今回のケースはどうだったのか。映像を見ると、福森の足は小林の足よりも札幌ゴール寄りにあるため、接地面だけで見ればオンサイドとなる。だが、小林の上半身は自身の足よりも札幌ゴール寄りにあり、福森の足との位置関係は一見して識別はつかない。したがって、VARの介入基準である「はっきりとした明白な誤り」だったのかという観点からは、やや疑問が残る判定修正だったと言える。

担当副審:堀越雅弘
VAR:榎本一慶
AVAR:相樂亨

■2021年VAR統計(第14節まで)
レビューで判定が修正された回数:26
レビューしたが原判定が支持された回数:5

オンフィールドレビュー:20
VARオンリーレビュー:11

①得点に関わる事象
ゴールが認められた回数:5
ゴールが取り消された回数:12

オフサイド(ゴール/ノーゴール):5/5
ハンド(ゴール/ノーゴール):0/3
その他ファウル(ゴール/ノーゴール):0/3
ラインアウト(ゴール/ノーゴール):0/1

②PKに関する事象
PKが与えられた回数:4(成功3、失敗1)
PKが取り消された回数:1
PKが蹴り直しとなった回数:0

エリア内外(PK/取り消し):1/1
ハンド(PK/取り消し):2/0
その他ファウル(PK/取り消し):1/0

③レッドカードに関する事象
カードなし→レッドカード:1
イエローカード→レッドカード:1
レッドカード→イエローカード:0
カードなし→イエローカード:1
レッドカード→カードなし:0

④人違いに関する事象
人違いでカードの対象が変わった回数:0

■過去のVARまとめ
<第1節 3回>
<第2節 2回>
<第3節 3回>
<第4節 なし>
<第5節 4回>
<第6節 1回>
<第7節 4回>
<第8節 2回>
<第9節 3回>
<第10節 5回>
<第11節 なし>
<第12節 1回>
<第13節 なし>

(文 竹内達也)
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