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恩師率いる町田から1G1A!! 青森山田出身のいわきMF山下優人がふわりFK弾「負けたくないと思っていた」

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チームメートの祝福を受けるいわきFCMF山下優人

[10.1 J2第37節 町田 2-3 いわき Gスタ]

 J2首位を独走するFC町田ゼルビアから1ゴール1アシスト。左サイドバック起用のいわきFCMF山下優人がビッグマッチで大仕事を成し遂げた。「みんな気合が入っていたし、相手が首位とかは関係なく、自分たちが真っ向から勝負するということを全員がしっかり意識して、ビビることなく自分たちのサッカーをすれば勝てると思っていた。それが良い結果につながったと思う」。主将の活躍で手繰り寄せた勝ち点3により、残留争いでも大きく前進した。

 0-0で迎えた前半31分、ゴール正面約20mのFKでキッカーを務めた。「練習でも蹴っていたし、もらった瞬間にいい位置だなと」。ゴールからの距離はやや近すぎるようにも思われたが、果敢に狙ったのは壁上のコース。「壁が高かったので最初はどっちに蹴ろうかなと思っていたけど、ちょっと落とすボールは今年練習していたので自信を持って蹴れた」。ふわりとした“壁越え”縦回転シュートをゴール左隅に流し込んだ。

 町田が組んできた壁には長身選手が並んでおり、「最初に見た時はウワッと思った」と正直に明かした山下。それでも高い壁を越えることを想定した練習が自信につながっていたという。「高さはあったけど、練習から壁をいつもより1〜2m近く置いて練習していた」。味方を壁前に立たせてボールをGKから隠して準備万端。あとは迷わず壁の上を狙うだけだった。

 なお、町田の黒田剛監督は青森山田高時代の指揮官。高校時代には高円宮杯プレミアリーグEASTで1試合2ゴールをFKから決めたこともある名手が、かつての恩師に左足のクオリティーをあらためて印象付けた。試合後、黒田監督からは「あのコースに蹴るのは分かっていた」と伝えられた様子。山下は「少しでも成長した姿を見せられればと思っていたし、負けたくないと思っていた」と達成感をにじませた。

 さらにこの日はポリバレントな選手としても成長の跡を見せつけた。高校時代から中盤中央を本職としている山下だが、今季はこの日を含む3試合に左ウイングバックや左サイドバックで先発。「守備で後れを取ったりもあった」と反省点も明かしつつも、それ以上のメリットをチームにもたらしていた。

 特に際立ったのが相手に狙いを絞らせないビルドアップへの関わりだ。「あまり中に入りすぎてもCBからもらうのはキツいなと思ったので、ちょっと低めにとって、相手のサイドハーフが食いついてくるなら真ん中が空くし、来ないならフリーで自分が時間を持って、そこから配球すればいいなと思っていた」。ボランチ経験も活かした臨機応変なプレー選択を続けると、後半1分には果敢な攻撃参加からエリア内のスペースを見つけ出し、勝負を決定づける3点目もアシストした。

 山下の活躍で一時3-0としたいわきは、最後は町田の猛攻を受けたが2点に抑えて3-2で勝利。降格圏との勝ち点差を10に広げ、残り5試合でのJ2残留に大きく近づいた。

「失点した時の相手の勢いはすごく感じたし、今まではそれに押し潰されて逆転負けすることもあったけど、全員が自信を持ってここからでも耐えられる、またもう1点取りに行けるという勢いを捨てなかったのが大事だった。首位相手にこういうゲームができたのは自分たちにとってプラスかなと思う」。前半戦の町田との対戦では試合を優勢に運びながら0-1で敗戦。この日は自らの活躍により、チームの成長も示す結果をもたらした。

(取材・文 竹内達也)
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Text by 竹内達也

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