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新体制1年目の青森山田、恩師の町田・黒田剛監督と「刺激をお互いにもらい合って」自分たちもリーグ制覇

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FC町田ゼルビア黒田剛監督がプレミアリーグEAST優勝を決めた青森山田高・正木昌宣監督を祝福

[12.3 高円宮杯プレミアリーグEAST第22節 FC東京U-18 0-2 青森山田高 東京ガス武蔵野苑多目的G]

 青森山田高が2年ぶり4度目のプレミアリーグEAST制覇。この日は青森山田前監督で、FC町田ゼルビアを初のJ1昇格、J2優勝へ導いた黒田剛監督も来場し、教え子たちの戦いをピッチサイドから90分間フル観戦した。

 黒田監督は、青森山田監督として21年度に選手権、インターハイ、プレミアリーグEASTの“3冠”を達成。1年の3分の1もの期間雪に覆われるという青森で勝つ組織を作り上げ、選手権優勝3回、プレミアリーグファイナル優勝2回を成し遂げた。昨秋に町田監督への転身を発表。29年間指導した青森山田を離れ、プロの世界での挑戦をスタートした。

 多忙を極めた今年、黒田監督が現地で青森山田の試合を観戦するのは今回が初めてだった。その前で、1年前に退任を伝えられた際はショックを受けていたという1、2年生が逞しく戦って勝利。「奮起して、非常に力強くなったと思う」(黒田監督)。そして、“黒田監督がいなくなったから”と言い訳をすることなく、努力を続けて優勝を果たした選手、コーチ陣の優勝を讃えていた。

 黒田監督、青森山田はそれぞれの活躍に刺激を受けていたようだ。黒田監督の教え子でもある青森山田の正木昌宣監督は、「監督がゼルビアでずっと結果を出し続けていて、刺激をお互いにもらい合っていたような」と語り、黒田監督も「町田も勝ったし、お互いに切磋琢磨しながら、励まし合って勝っているところもあるから、そういう意味では良い結果かなと」と1年間を振り返る。

 青森山田は昨年11月に監督就任した正木監督の下、今年が実質1年目のシーズン。プレミアリーグEAST(22試合)では開幕から2試合連続で勝点を落とすことが一度もなく、白星を重ねて歴代最多の勝点51で頂点に立った。町田も前年の15位から大躍進。ともにリーグ優勝を果たした。

 黒田監督は監督1年目で優勝した正木監督に対し、「監督1年目って凄くプレッシャーがかかる」「正木も苦しかったと思う」。青森山田は開幕当初から首位に立ち、常に追われる立場でのシーズンだった。黒田監督は「ウチ(町田)も10節目からずっと首位だったけれど、毎日眠れないくらい選手に掛ける言葉を考えているくらいだから」。だが、この日も正木監督は選手たちの集中力や動きがストップしないように、細部まで高い要求。選手たちもそれに良く応えて勝ち切った。

 青森山田はインターハイの3回戦敗退など悔しい経験も力に変えた。黒田監督は雪国・青森に位置する青森山田が強くあり続けるためには勝ち続けることが必要だと語る。「このチームが強さを持続していくためには勝ち続けなければいけないし、選手たちも入ってきてくれないから。選手権に向けても弾みをつけたと思う。これを持続していくのが青森山田の強さなので、来年以降も勝ち続けていかないとならないし、青森山田である以上、こういうミッションは常に乗り越えていかなければならない」とメッセージを送った。

 1年前はまだ教員だった黒田監督は来季、J1で指揮を執る。11月27日には青森山田の全校朝礼に訪れ、生徒たちと質疑応答。また、来季へ向けたチーム編成など多忙ではあるものの、青森山田の選手権も観戦する意向を明かしていた。正木監督は「(今回の優勝で)ホッとしましたよね」と心境を口にしていたが、黒田監督時代と同様に、選手権決勝の日までチーム、選手たちが成長し続けることを求める考え。広島ユースとのプレミアリーグファイナル、最激戦ブロックに入った選手権全国大会と難しい戦いが続くものの、青森山田は恩師の前でさらに成長した姿と勝つところを見せる。

優勝の瞬間、青森山田高・正木昌宣監督は笑顔も

(取材・文 吉田太郎)

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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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